陸上競技場ウレタン舗装材の「安全性」:特定化学物質無配合製品の使用を推奨

沖縄県スポーツ施設研究会では特定化学物質無配合製品の使用を推奨

沖縄県スポーツ施設研究会では、作業員の健康被害及び一般の利用者が多く利用する公共施設におけるウレタン舗装工事では健康被害の防止の観点から、最大限の安全性の確保を最優先に使用する主剤及び硬化剤については環境対応型の特定化学物質無配合製品の使用を推奨しています。

ウレタン塗膜防水材やウレタン舗装材には特定化学物質が含まれている

主剤TDI(トリエンジイソシアネート)・硬化剤MOCA又はMBOCA(3,3-ジクロロ-4,4-ジアミノフェニルメタン)
※ウレタン舗装材関係の特定化学物質 
主剤TDI(トリエンジイソシアネート)・硬化剤MOCA又はMBOCA(3,3-ジクロロ-4,4-ジアミノフェニルメタン)

一般的なウレタン塗膜防水材及びウレタン舗装材には特定化学物質が含まれています。

このうち硬化剤に含まれているMOCAについて、2016年9月21日に厚生労働省より関係業界へ要請について記者発表がありました。その内容は、MOCA製造工場で膀胱がんの病歴や所見が明らかになり、健康被害の防止対策の要請が関係団体や事業所に対して行われました。

 厚生労働省は、本日、(一社)日本化学工業協会や化成品工業協会など計4団体に対して、「3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン」(MOCA)※1について、1 法令に基づくばく露防止措置等の徹底、2 膀胱がんに関する検査の実施などを要請しました。(要請内容は別添2のとおり)

※1 MOCAは、防水材、床材や全天候型舗装材などに利用されるウレタン樹脂の「硬化剤」で、従来から「特定化学物質障害予防規則」の「特定第2類物質」及び「特別管理物質」とされています。

 これにより、MOCAを取り扱う事業者は、作業環境測定の実施、局所排気装置等の設置、健康診断の実施等が義務付けられていますが、健康診断には膀胱がんに関する項目は含まれていません。MOCAの特性などは、参考資料をご覧ください。
 平成27年12月に明らかになった福井県の膀胱がん事案を契機として、オルト-トルイジンを取り扱ったことのある全国の事業場について、労働局・労働基準監督署が調査等を行ったところ、オルト-トルイジンを過去に取り扱っていた別の事業場※2の、労働者1名、退職者6名の計7名に膀胱がんが認められました。また、この7名には、オルト-トルイジンの取扱歴がない方も含まれていました。このため、所轄の労働局・労働基準監督署や独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所(以下「安衛研」という)が、原因究明のため、さらなる調査を行いました。

※2  平成28年3月4日付け報道発表資料の別添p.3の「C事業場」

 現時点までの調査で、この7名のうち、5名について、MOCAの取扱歴があることが分かりました。(なお、この事業場では、平成22年以降、MOCAの取扱作業はありません。安衛研では、引き続き、原因究明のための調査を実施しています)
 厚生労働省では、今回の団体あての要請とともに、緊急対応として、MOCAを取り扱ったことのある各事業場に対しても、健康障害の防止対策の徹底が図られるよう、労働局・労働基準監督署による調査・指導を実施します。また、MOCAに関する特殊 健康診断項目の見直しについては、専門家からなる検討会において、現在検討を進めています。

化学物質MOCA(モカ)による健康障害の防止対策について関係業界に要請しました|厚生労働省

特定化学物質障害予防対策について

ばく露防止措置の徹底(現在取扱事業場)

  • 特定化学物質障害予防規則(特化則) に基づくばく露防止措置が適切に実施されているか確認。
  • 保護手袋の着用作業後の付着物除去 など、経皮・経口ばく露のリスクがないか点検。

膀胱がん検査の実施(現在及び過去取扱事業場)

  • 特化則に基づく 膀胱がん検査 を、可能な限り実施する。
    • 対象者:現在取り扱っている労働者、過去に取り扱ったことのある現従業員。
    • 退職者 に対しても、検査の受診を推奨。

記録の保存期間の延長(現在及び過去取扱事業場)

  • MOCAばく露から 30年以上 経過して発症した膀胱がんの事例を考慮し、以下の記録を 法定30年を超えて保存 する。
    • 作業記録
    • 作業環境測定の評価記録
    • 特殊健康診断の結果記録

労働基準監督署への報告(現在及び過去取扱事業場)

  • 以下の内容について、労働基準監督署へ報告 する。
    • 膀胱がん検査の実施予定や状況
    • 過去からのMOCA取扱状況
    • 現在のばく露防止対策の実施状況
  • 監督署から送付される 報告様式に従い、電話等で連絡 する。

補足(ウレタン樹脂防水材に関する注意点)

  • MOCATDI を1%超含む防水材は、特化則の対象。
    • 特定化学物質作業主任者の選任
    • 特殊健康診断の実施
    • 不浸透性の保護衣の備え付け などが必要。
  • 特化則の適用がない場合でも、労働安全衛生法に基づき 適切な保護措置 を実施すること。

などの対策を行う必要があります。